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東京高等裁判所 昭和58年(ラ)488号 決定 1983年12月14日

抗告人

鈴木あきら

相手方

横河北辰電機株式会社

右代表者

清水正博

右代理人

柳田幸男

野村晋右

熊谷光喜

主文

本件抗告を棄却する。

理由

一抗告の趣旨及び理由

1  抗告の趣旨

原判決を取り消す。

抗告人が所有する株式会社北辰電機製作所発行に係る記名式額面普通株式(一株の金額金五〇円)一万株の株式買取価格は、一株につき金三一〇円と定める。

2  抗告の理由

本決定末尾に添付した陳述書の写し中「抗告の理由」欄記載のとおりである。

二当裁判所の判断

抗告人は、抗告の理由として原審の認定及び判断には株主平等原則違反などの違法があると主張するが、要するに、原審が抗告人において名義書換請求をした昭和五七年一一月五日及び同月九日の株価(東京証券取引所第一部の終値)の平均値である金二三八円(円未満切り捨て)をもつて本件株式の買取価格と決定したことにつき、右価格決定が低きに過ぎるとしてこれを非難するものと解される。しかし、合併計画の公表後にその事実を知りながら新たに株式を取得して株主となつた者については、商法四〇八条の三第一項に定める価格による救済を当然には顧慮する必要はなく、このような株主からの株式買取価格を決定するに当たつては、その価格は合併を前提として形成される市場価格によるべきであり、取得時の価格を超えることはないものとした原審の判断は、右規定の趣旨に照らして妥当なものであり、また、本件記録によると、右価格決定の前提事実についての原審の認定及び決定方法も正当として是認することができる。原決定に抗告人主張のような違法は存せず、他に本件記録を精査しても、原決定を違法とすべき事由は認められない。

よつて、本件抗告は理由がないから、これを棄却することとし、主文のとおり決定する。

(吉江清景 川上正俊 渡邊等)

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